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第八章
STATICAL ELECTRICITY.
静電気

Fig.        
248
Discovery of Electricity

電気の発見
キリストの時代が始まる600年前、ミレトスのターレスは、琥珀を羊毛で強く摩擦すると、紙の小片、鷲ペンの羽、ストローのような軽い物体を引き寄せる性質を獲得することを知っていた。
 ……
この実験を再現するには、ガラス管か封蝋の棒を、ウールの布で摩擦する。次いで、それを金箔の細片、鷲ペンのはね、あるいは紙を千切ったものに近づけると、後者は、励起されたガラスまたは封蝋に、引き寄せられ付着する。
249
250
Twokinds of Electricity

二種類の電気
電気に二つの種類があることは、ガラスや樹脂を摩擦したものを、木のボールにかざすことによって示される。
ガラス管を布で摩擦し電気振り子に近づけると、木球ルは、まず、引き寄せられ、次いで、短い時間の後、反発される。球にはその時、ガラスと同じ電気が負荷される。
さて、次に、封蝋のような樹脂体をを布で摩擦し、励起された木球に近づけると、後者は急激に前者に引き寄せられる。(同様に、しかし、順番を変えて樹脂、ガラスの順に近づけても同様な動きが見られる。)このことは、ガラスと樹脂に起こる電気が、作用において、一つは引き寄せ一つは反発するというように、異なることを示す。このことは、1734年に、Dufyによって発見された。
 
251
Coulomb's Sphere

クーロンの球
実験の示すところによれば、物体が起電されると、電気は全て物体の表面に移動し、薄い層に滞留し、絶え間なく逃げようとする。実際に、電気は導体の出口を見つけ次第、逃げ出す。
この事実を示すための種々の実験の中から、クーロンによって行われた初期のものの一つを選んでみよう。彼は、図のように、ガラス棒の上に銅の球を置いた。次に彼は、合わせたときにぴったり最初の球に合う中空の銅の半球を用意した。半球を、中空でない球を覆うようにセットして、彼は装置全体を起電された物体に接触させ、充分に電気を負荷した。
物体から離し、彼は二つの半球を急激に引き離した。各々の半球を電気振り子に近づけることで、どちらも荷電していることがわかった。中空でない球体を同様に試験すると、電気の痕跡は見られなかった。つまり、完全に中性であった。
物体から外殻を引き剥がすことにより、彼は、電気の全ての粒子を取り去った。これにより、電気は、完全に表面にあることを証明した。
 
252 Influence of the Form of Bodies

物体の形状の影響 
物体の表面における電気の分布は、それらの形状に影響される。物体が、試験面(proof-plane)と呼ばれる装置で見られるように、球状であれば、(電気)流体は等しく分布する。
 …………
物体が図のように細長くなっていると、異なる結果が得られる。この場合、試験面は、尖った端部で、その他のどこの部分より強く荷電している。
 
253 Induction

誘導
誘導によって物体を荷電する方法を示す。右側は、摩擦式起電器のの一次導体である。これは、以下に判るように、正に荷電している。左は、金属製の筒で両端が球形である。下側には、間隔をあけて、一対の木球振り子が取り付けられている。これらは、導電性の糸で吊り下げられている。  
254
Electrical Machine

摩擦式起電器
摩擦式起電器は、摩擦することによって、無制限の量の電気を発生する器具である。
この器具は、200年前に、エアーポンプの著名な発明家であるオットー・フォン・ゲーリケによって発明された。当初の器具は、木製の軸に硫黄の球を取り付けたという単純な形のものである。軸を回転させながら、球を押しつけることにより、大量の摩擦電気が発生する。さまざまな改良を経て、図のような形状になってきているが、これは現在ほとんどの物理学研究において採用されているものである。
255 Precaution in using the Machine

機械使用時の注意
一次導体が起電されたあとは、……
近接する物体への効果は、金属の針を、荷電した一次導体に近づけることで見て取れる。針が、導体にある距離まで近づくと、電圧計は低下し始め、電気の損失を示す。
 
256 Electrophorus (1)

起電盆(1)
起電盆は、ボルタ(Volta)に由来する機械で、これにより相当量の電気を得ることができる。木製テーブル上に置かれた樹脂の板と、ガラスの把手が付いた錫箔で覆われた木の板とからなる。
この器具を使うにあたたっては、まず、猫の毛皮で、樹脂の板を強くこする。これにより、負の電気が樹脂に発生する。
257
258
Electrophorus (2)

起電盆(2)
次いで、把手を持って、円盤をあてがう。樹脂板は、誘導作用により、錫箔中の正の流体を下面に引き寄せ、負の流体を上面に押しやる。ここで、もし、指を上面に触れると、負の流体は体内に流れ込む。そして円盤は、正の電気に帯電する。把手をもって、円盤を樹脂板から引き離し、図のように拳を近づけると、負の電気に由来する電気火花が、体から、正に帯電した円盤へと走る。
259 Gold-leaf Electrometer

金箔検電器
金箔検電器はバネット(Bannet)によって発明された道具である。物体が帯電しているかどうか、その電気の種類は何か、を知るのに用いられる。
ガラス瓶にコルクで栓をし、太い銅の線を通す。銅線の最上部は銅の球である。下端には、二枚の金箔片がある。
 
260
Electrical Recreation

電気の楽しみ
主要なる電極から火花を引き出す方法が図に示される。人体によって受け止められた場合、火花は、電気衝撃と呼ばれる興奮をともなう。この衝撃は痛みであり、時により、危険な場合がある。
261  
Electrical Stool

電気踏み台
適切に帯電せられているのであるなら、電気火花は人体からも引き出しうる。この目的のためには、図に示されるごとく、電気椅子が用いられる。この椅子は硝子の脚によりて絶縁されている。台の上に立ち、一次導体なる電極を保持せる者は、(摩擦)板が回転されるにおいて、正極に帯電する。第二の者は、今や、第一の者と握手をせんと試みるか、衝撃が経験され、火花が彼らの間に通ずるのである。
262 Electrical Chime

電気チャイム
図の場合、三つのベルが、水平な木の棒mから吊り下げられている。外側のべるbとcは、金属の鎖で吊されている。真ん中のベルは絹糸で吊されている。このベルは、さらに、金属の鎖で接地されている。ベルとベルの間には、絹糸で金属の球が二つ下がっている。装置全体は、起電器の一次導体につながれている。
263
Electrical Puppet

電気人形
電気人形とは、電気の引力・斥力によって踊るように作られた小さな人形である。
それは枯れた木の芯のような材質からできていて、二枚の金属板の間に置かれる。金属板の一方は起電器の一次電極に、他方は鎖によってアースに接続されている(図に示す)。
起電器が回転せられると、上の金属板が帯電し、人形を引きつける。人形は帯電し、ただちに、下の金属板へと反発され、そこで電荷を失い、ふたたび、上の金属板へと引き寄せられる。これを繰り返し、起電器が回転するにともない、上下に踊る。 
264 Electrical Wheel

電気輪
電気輪は四つ以上の、先端が曲がった腕からできている。小さなキャップに取り付けられ、回転軸に載っている。この軸は、一次導体に取り付けられている。これは一種の反動輪であり、先端からの電気の脱出で(矢印の方向に)回転する。 …… 輪は、真空中では回転しないが、それは、真空中では電気は、抵抗を受けることなく脱出するからである。 
265 Electrical Egg

電気卵
電気卵は、真空中を電気が流れる時に発生する、卵形をした光である。器具は、球形あるいは楕円形の中空のガラスで、中には小さな金属製の球が、ある距離をおいて置かれている。上の球は一次導体につながれ、下の球は接地されている。ガラス球からはエアーポンプで空気が抜かれている。起電すると、二つの金属球の間に電流が起こる。ガラス球は真空なので、電流には障害がない。実験を暗くした部屋で行うと、美しい紫色の光が、二つの金属球の間に生じる。
266 Electrical Square

電気方形板
電気方形板は、四角いガラスの板である。その全面には、錫箔のほそい帯が、図に示す黒い線のように留められている。帯の一つの端は一次導体につながれており、他端は鎖で接地されている。方形板はガラスの脚で絶縁されている。
起電されると、電気は細い錫箔の中を大地に向け流れる。火花が出ることはない。ところが、錫箔がある点で破壊されると、その点では火花が連続して生じる。大変に近接しているので、連続して光を発する。ここで、ペンナイフを用いて、錫箔をある特定の、例えば花の形状に破壊すると、連続した光はそれらの各点で発光するので、像は、ガラスに光で描いたように見える。どんな形状あるいは文字でもかまわない。暗い部屋で行えば、実験はさらに印象的である。
 
267
Electrical Canon

電気砲
電気砲は小さな砲で、電気火花で発射される。
この砲は電気的娯楽として用いられるのみならず、ある重要な化学的事実を実証することに役立つ。−すなわち−、電気火花は化学反応を生起させることができる、ということを。たとえば、水というものは水素と酸素が2対1という割合でできている。さて、これら二つの気体を、この割合で混合し、混合気体の中に電気火花を発生させると、二つの気体は即座に合体し水を形成する。しかのみならず、この組み合わせは、はでな閃光と轟音をともなう。轟音は、混合の瞬間に形成された水蒸気の膨張の力に起因する。図に示された電気砲は、かかる諸原理に基づいて作られているのだ。 
268 Condenser of Epinus

エピナスのコンデンサー
エピナス(Epinus)のコンデンサーは、ガラスの支持台上の、二枚の金属板A,Bからなっている。そして、金属板よりなにがしか大きなガラスの板Cを、間に挟んでいる。これらの何枚かの板は、AやBの板を、Cの板に近づけたり離したりできるように、架台のうえに設置されている。
269 Method of using the Condenser

コンデンサーの使用法
コンデンサーを使うには、AとBを動かし、Cに接触させる。板Bは一次導体につながれる。板Aは接地される。起電するとBは正に帯電する。もし板Aがなければ、板B上の電気の密度は一次導体の密度と等しいが、板Aがあるため、結果は異なる。
板Bは板Aに誘導作用を及ぼす。そして、板Aの正の電気を大地に追いやる。負の電気だけが引力によって留まる。 ……
装置が満杯に充電されたら、鎖を取りのけてAの、そして一次導体から取り外すことでBの、それぞれの接続を断ち切る。
 
270 Leyden Jar

ライデン瓶
ライデン瓶は、それが発明された都市にちなんで名付けられているが、コンデンサーである。ここまでに述べられたものとは、形状が異なるだけである。
形が改良されており、薄いガラスの瓶でできている。外側は錫箔のフォイルで覆われ、内側には錫箔やそのほかの金属がゆるく詰められている。コルクを通してワイアーが内部の金属に達している。反対の端は金属球になっており「ボタン」と呼ばれる。
 …………
ライデン瓶を充電するには、外部の錫の部分手で持ち、図のように一次導体に近づける。 …… コンデンサーの場合のように、二つの流体が反発しあい、大量の正の電気が内側に、負の電気が外側に集積する。
271 Discharger

放電器
瓶が充電された後、片手に瓶を持ち、もう一方の手でボタンに触れると、腕や体にショックを感じる。そして、瓶は中立の状態に戻る。ショックなしに放電するには、図のような放電器を用いる。  
272 Electrical Battery

蓄電器
蓄電器は、あたかも一つのコンデンサーのように働くように結合された、ライデン瓶の集合体である。
273
274
Condensing Electrometer

検電器の蓄電
金箔検電器は、大変に敏感なものであるが、二枚の板、すなわち蓄電板を付け加えることで、さらに鋭敏にできる。
陰極板は、金箔を下端に付けたステムに取り付けられている。陽極板はガラスの把手が取り付けられていて、随意に取り去ることができる。二枚の板は真鍮製であり、ワニスが塗られている。つまり、ガラス板のかわりであるが、大変に薄く、蓄電力が大きくされている。
 
275
Physiological Effect of Electricity (1)

電気の生理学的効力(1)
電気ショックは、同時に、大変多くの人々に与えることが可能である。このためには、かれらは手を互いに取り合い、図に示す如く、鎖を形成する。しかるのち、鎖の一端の人物はライデン瓶を彼の手に取り上げる。他端の人物が瓶の球体(ボタンという)に触れることにより、回路が完成する。その時、人の鎖の全体に亘り、同時的に衝撃が感ぜられる。Noullet(人名)は、ルイ15世の御前において、兵士の一連隊すべてに、電気ショックを与えてみせたのである。
276
Physiological Effect of Electricity (2)

電気の生理学的効力(2)
蓄電器を使うと、ショックは大変強力になるので、それを受けようとする試みは危険なものになる。たった6本の中型の瓶を使った蓄電器で、ショックは危険なものとなる。もっと強力な蓄電器では、猫、犬、あるいは更に頑丈な動物が、ショック一発で死んでしまう。図は、9本の瓶の蓄電器で殺害された犬を示す。犬の金属製の首輪は蓄電器の外部被覆につながれている。ついで、放電器の一つの球が ……
オランダのハーレムの博物館には、雄牛を殺害できるような蓄電器がある。パリの国立工芸学校には、物理学者シャルルによって寄贈された、さらに強力な蓄電器がある。
277 Heating Power of Electricity

電気の加熱力
電気によって発生する熱は、エーテルや火薬のようなものに着火するばかりでなく、金属を溶融し蒸発させるほどのものである。
図はエーテルへの着火を表す。エーテルはグラスに満たされている。その底部には金属線が通っており、ライデン瓶の外部被覆に接続されている。装置のボタンが、ライデン瓶のボタンに触れることで、回路ができあがると、火花が飛び、エーテルに着火するに十分な熱が発生する。
 
278 Universal Discharger

万能放電器
蓄電器を細い金属線を通して放電すると、金属線は溶融し、さらには、蓄電器のパワーによっては蒸発する。  
279 Mechanical Effect of Electricity

電気の力学的効果
電気の力学的効果は、膨大な量の電気が不完全導体の中を通過するときに示される。
図は、ライデン瓶でカードに穴をあける実験である。
 ……
ガラスに穴をあけるには、大きな蓄電器が必要である。ハーレム博物館にあるものは、400ページの本に穴をあけることができる。
280
Return Shock

リターンショック
リターン・ショックは、雷光が起こったところから大変離れたところで、人々や動物が感ずる、荒々しい、しばしば致命的なショックである。(図を見よ)
この現象は、上空の帯電した雲が、その下にある物体に引き起こす、誘電作用によるものである。このような物体は、すべて、雲の電荷の反対側に強く帯電している。このような時に放電がどこかで起こると、雲は電気的な中性に回帰(リターン)する。誘電も瞬時に停止する。誘電作用により帯電していた全ての物体は、瞬時に電気的中性に回帰する。この回帰の「瞬時性」がリターン・ショックを構成する。 


281
Lightning-rods

避雷針
避雷針は、落雷の影響を回避するために、建築物や船の上に置かれる、金属製の棒である。
282 Aurora Borealis

北極光
オーロラは、地球の極付近に、そして特に、北方のすなわち北極の付近に出現する、発光現象である。

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