「まず、猫の毛皮で、樹脂の板を強くこする」

猫という生き物、洋の東西を問わず、随分酷く扱われているようです。日本では三味線ですか。一匹から一棹分しか採れないそうですね。しかも耐用期間はわずか二年だそうです。津軽三味線は犬の皮らしいですけど。
最もわかりやすいものから始めましょう。それは電気量の保存則です。世界中にある電気量という数が考えられまして、これは何がどうなろうと変化いたしません。どこかで一部が消えたかと思いますと、それは別の所に顔を出しております。保存されるのは電気量の総合計なのです。この法則はファラデーが実験によって発見いたしました。大きな金属の球をつくりまして、その中に入って実験したのです。球の外側には鋭敏な検流計がついており、球面に電荷が現れたかどうかわかるようになっています。少量の電気でも大きな効果を現すのです。球の中にファラデーはありとあらゆる異様な電気装置を持ちこみました。ガラス棒を猫皮でこすって帯電させたり、大きな起電機をまわしたりしましたから、球の内部はスリラー映画の実験室みたいでした。しかし、何をしても球の表面には電荷が現れなかった。つまり電気はついに創り出されることがなかったのであります。

   ファインマン
     「物理法則はいかにして発見されたか」より

   
    20ポンド紙幣のファラデー

   
    マダガスカルの切手のファラデー