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第九章
DYNAMICAL ELECTRICITY.
動電気

Fig.        
283 Galvani's Experiment

ガルバーニの実験
化学物質を混合すると、電気が起こることは、長く観察されてきたことである。このようにして起こされた電気の形式は様々であるが、その性質は摩擦によって起こされたものと同一である。ある種の化学的組み合わせによって起こされた電気には、ガルバニズムの名称が与えられてきた。これは、この新しい電気の起こしかたを発見したガルバーニ(Galvani)の栄誉を称えるためのものである。
1790年にガルバーニは、殺されたばかりの蛙の体が、摩擦式起電器の近くに置かれ、電気火花が走るたびに興奮を示すことを観察した。これは、すでに述べたリターンショックによるものであるが、これを知らないガルバーニは、この現象の説明を考え始めた。ある日のこと、彼は、死んだ蛙が窓の銅製のフックに吊り下げられているのを見た。そして、風が吹き、蛙の下半身が窓の鉄棒に当たるたびに筋肉の収縮が起こることに着目した。これは、摩擦起電器とは全く関係ない電気の発現である。ここには、近代化学における最も偉大な発見の一つに繋がる手がかりがあった。
この発見は、次のような実験へとつながる。蛙を殺し、下肢部分を切り取る。これを銅のフックcに、背骨および両側の神経を通すように吊り下げる。ついで、亜鉛の小片を持ち、一端を銅の支柱に、他端を蛙の肢に触れる。接触するたびに、筋肉は収縮し、生きているときの動きを全て再現する。
284
Voltaic Pile

ボルタ電池
ボルタ(Volta)はガルバーニの実験を繰り返した。研究の結果、彼は接触の理論を得た。この理論に従うと、二つの金属あるいは他の異なる物質を、単に接触させただけで、必ず、両物体の天然電気の分離が起こる。正極流体が一端に集まり、他端には負極流体が集まる。
 ……
1800年に、ボルタは数多くの接触を積層した装置を発明した。これにより、さらに強力な効果が生まれる。この装置はボルタ電池と呼ばれる。
285
Bunsen's Pile

ブンゼン電池(分解図)
炭素電池は、今から20年ほど前ブンゼン(Bunzen)によって発明されたので、しばしばブンゼン電池と呼ばれる。
A:陶器の容器で、希硫酸を入れる
B:亜鉛の筒で、一端が開いていて、頂部に銅線がはんだ付けされている
C:多孔質の陶器で、硝酸を入れる
D:炭素あるいはコークスの円柱で、充分に「か焼」され電気の良導体になっているもの
286
Physiological Effect

生理学的効果

ガルバーニ型の電気(連続する電流を伴う電気:動電気)の生理学的効果は、連続的なショックであり、荒々しい筋肉の収縮を引き起こす。これは生きている場合のみならず、ガルバーニのカエルで示されたように、死んだ動物についても起こるのである。
ガルバーニ型の電池を、一方の極しか触れないなら、ショックは感じられない。しかし図のように、両方の電極を手に取るとするなら、我々はライデン瓶の時によく似たセンセーションを感ずるのである。ただ、ライデン瓶では瞬間的であるのに対し、ガルバーニ型からのそれは持続的である。

287
Illuminating Effects

照明効果
このような発熱効果は、多少にかかわらず、光の発生を伴う。しかし、最も明るい電気光を得るためには、か焼した炭素の電極を用いる。それらは、最初、接触させられ、強力なガルバーニ型電池の、一方は正の極に、他方は負の極に繋がれる。電極は、突如白熱し、目も眩むばかりの光を放射する。ここで電極をわずかに離してみると、電流は依然として、それらの間を通過する。そして、光は輝くアーチを形成する。ボルタの電弧と呼ばれる。この実験において、陽極に繋がれた電極は消耗していくが、反対の電極は大きくなっていく。したがって、炭素の粒子は、前者から後者に運ばれると結論づけられる。このことは、電極を隔てる空隙があるにもかかわらず、電流が継続する理由を説明する。
電光の強度は強大である。48の小さな電池は572の蝋燭に匹敵する。100の電池による光は、目を眩ませる。600ともなると正視できないことは、太陽が直視できないごとくである。
288 Decomposition of Water

水の分解
動電気は、1800年、カーライル(Carlisle)とニコルソン(Nicholson)によって、初めて水の分解に用いられた。
289

290
Electrotyping

電気鋳造(電鋳)
最初に鋳型を用意する。これの精密さが全作業の正否を左右する。蝋、漆喰あるいはグッタペルカが使えるが、後者の方が、現在では優れていると考えられている。常温では、グッタペルカは固いが、加熱すると、柔らかく可塑的になってくる。鋳型を造るには、グッタペルカを温水に浸し、適当な柔らかさにする。次に、コピーされるべき物体の上に、全ての箇所が接触するように、指で押しつける。その後、冷却して固化するまで放置する。固化したら剥がせば、使えるようになる。グッタペルカは物に貼り付く性質があるので、あらかじめ、黒鉛や石墨の粉で薄く覆っておく注意が必要である。
第二のステップは、鋳型に金属を沈積させることである。グッタペルカは不導体なので、これを導体の物質で被覆する必要がある。これは、鋳型を造った時と同様のやり方で、黒鉛のコーティングを施すことで、なされる。鋳型に保持用の金属線を付ければ、電槽に漬ける準備が整う。
右の図は複製されるメダルである。左は、金属の沈積の準備のできたグッタペルカである。沈積について、銅を仮定すると、通常2ないし3個のダニエル電池が使われる。
291 Daniel's Battery

ダニエル電池
ダニエル電池が、ブンゼン電池と異なるのは次のところである。炭素の円柱は亜鉛の円柱Zで、亜鉛円筒は銅の円筒Cで置き換えられている。外部容器はガラスで、硫酸銅の溶液(ブルーバイオレット)で満たされている。
 ……
図は、鋳型に金属を沈積するところである。Mは硫酸銅の溶液が入った容器である。
292
Silvering

銀メッキ
物体を金や銀で薄く被覆する過程は、電気鋳造のそれに類似である。金や銀のコーティングの過程を完全に行えば、一様な厚さになるばかりでなく、しっかりと付着することになる。

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