[ クラウンプリンス ]
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これはT氏から聞いた話ですが、実話のようです。
ある時T氏は、ごく短時間ですが、某国のクラウンプリンスをご案内する機会があったそうです。さる故宮のご視察に関連して、経路をご案内申し上げるという軽い配役だったようです。T氏の出自はブン抜きの庶民ですから、かかるやんごとなきお方とお話できるなど、一族の歴史では空前の出来事だったことでしょう。もっとも台詞は全部で4つぐらいだったそうです。
@ こちらへどうぞ
A ここでスリッパにお履き替えください
B いかがでしたか
C こちらでしばしお休みください
まず@ですが、ご休憩所から徒歩で故宮に出発する時です。Aは宮殿に着いたところで、Bは視察を終えて出てこられた時、Cは再びご休憩所に戻ったところです。
で、ご休憩所玄関で待機しているときのこと。ほかに見るべきものとてなく、しみじみとお靴を拝見しました。手に取るわけにはいかないので外見だけですが、なかなかしっかりした作りの実用本位の靴と拝見しました。しかも、手入れは行き届いているのですが、分類上は「履き古した靴」でした。靴を自分で選んでいることが拝察され、ちょぴっとこの方が好きになりました。
Bの台詞に対してお答えになるとき、お顔は自然にT氏の方向を向きます。その背後20m付近には観光で来ていたおばさんなど(庶民)が一杯です。丁度、お妃のご懐妊説が飛び交っていたころですから、おばさん達の興奮ぶりはすごいモノでした。「M子様によろしくー!」とか「お大事にー!」とか叫んでいます。こんな困ったおばさん達にも、殿下はにこやかに手をお振りになります。
(T氏もM子様がドタキャンになってがっかりしていたようです)
予定外の台詞をこちらから申し上げることは「あってはならないことだ」と釘を刺されていました。しかしT氏はそんな注意事項をすっかり忘れ、Cへの移動の途次、お持ちになったカメラを見ながら、「写真がお好きなのですか?」などと質問してしまいます。すると「ええ、しかし、あまり皆さんを写すなと注意されています」とのお答えでした。この方が本当に好きになりました。
今回の騒動で思います。ある一家があったとして、これを千人以上の人間が取り囲み、生活のかかった二千数百の目や耳で凝視し、聞き耳を立てています。この状況は、見られる側には大変につらいことだという気がします。
これまではいろいろ押しつけておきながら、一旦問題が起きそうになると、ご意見があるのなら伺いましょう、と居直る。これは相当ズボラなやり方のように思われてなりません。T氏は既に殿下のファンだからそう思うのでしょうか。
2004/05/29(Sat)
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