[ ミステリー不況 ] |
U先生からのメッセージです。
『もう数週間前になりますか、ある殺人事件で、被害者を池に沈めました。沈めるために、石油のポリタンクをいくつも購入し、水を入れて縛り付けたというのです。ポリタンクを購入したところからも足がついたというニュースです。水を入れた容器が池の水に沈むのだろうか。死海の水でも入れたのでしょうか』
これに続いて、
『イギリスのサッチャー首相がドイツ統一に反対したわけですが、その態度について、多分フランスやドイツの首脳の回想だったと思いますが、次のような台詞があります。「彼女はドイツが統一したらまた戦前のようなドイツが再現すると言うんだ。彼女はサイエンティストだから、同じ条件では同じ結果が出ると考えるんだなあ。そんな事は無いんだけれどなあ」というのです。なるほど、物理学科出身というだけで、多分コンプレックスも混ぜて、そういう具合に見られていたのか、と感銘を受けました』
まあ、英仏独の超エリートがどう考えるのかなどは、テバごときが忖度できるものではありません。欧州でも法文系と理工系には反目があるのかな、という感想程度はありますが。ここ数世紀のつらい想い出というものもあります。同じ政治的出来事についても、英国なら歴史物理学的に考えるだろうし、仏独なら歴史物語風に考えるような気はします。
問題は前半です。ポリエチレンの比重は0.93前後です。この容器にいくら水を入れても、比重は1.00未満のはずです。こんなものを、証拠物件を沈めるための「重し」と考えていたのであれば、完璧に犯罪者失格でしょう。この程度の出題は中学入試にさえあるのですから、本邦の理科教育は、義務教育はおろか小学校レベルで壊滅していたことになります。
アガサクリスティが砒素や放射性物質に関して豊富な知識を持っていたことは有名です。というよりは、ミステリー作家の義務として相当の勉強をしていたのだろうと思います。それに引き替え日本のミステリーは、時刻表だの密室だののトリックばかりで、何かチマチマしたことに熱中しているような気がします。「点と線」クラスなら、また別格ですが。
はっきり言って、プロの読者を満足させられないのです。つ・ま・ら・な・い、のです。
2003/11/30(Sun)
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