[ カバヤ文庫 ] |
中部地方にお住まいのU先生が、マ島をご一緒した縁で、世界各地に行かれた折々に纏められた旅行記を、チビチビと送ってくださるようになりました。もちろん第一便は最新作のマ島版です。え〜と、惑星進化論(全く解りませんが)なんかを若いころ研究されたようで、その(?)観察眼と通過型旅行者(滞在型もあるのかな?)特有の気楽さで書いておられます。大変面白く読ませていただいています。
その後も2編ほどお送りいただきました。段々溜まってきそうな感じなので、「U文庫」というフォルダーを作りました。それをご報告申し上げた中で「昔、カバヤ文庫とかいうものを溜め込んだ時以来の楽しみです」と書いたら、これが偶然ヒット。テバは知らなかったのですが、カバヤ文庫の勧進元・カバヤ食品は、U先生の郷里・岡山のメーカーだったんですね。本当に世間は狭いこと、です。
「かばや文庫とは懐かしい。本社が岡山でしたから、我々の熱中度は
大きかったのですが、北関東でも熱中しましたか」
とありました(無断引用失礼)。更に、
「かばやの二代目は偉くて、今や分子生物学的分野で
一流の企業だそうですね」
と、カバヤがいまだ健在であることまで教えていただきました(再度失礼)。
カバヤ文庫の入手方法ですが、カバヤキャラメルの中の点数カードを50点分集めて、お菓子屋さん(ていうより、駄菓子屋さん)に持っていって現物と交換してもらうのです。当の文庫はお店の奥にしつらえた棚に、これ見よがしにズラリと並べられているので、次の目標も立てやすいのです。しかし時代は昭和20年代後半、U先生は小学生でしたが、テバは幼稚園児です。ハンディありです。
しかしテバは、キャラメルを買わなくても入手できる独自のルートを持っていたのです。それはですね、もう時効が成立しているはずですから明かしましょう。我が家と昵懇にして下さっていた校長先生が供給元だったんです。学校へ持って来ちゃいけないんですよ、漫画の本は。持ってきたら即没収です。没収された本は山積みになっていますので、そこから欲しいものを選んでくるだけです。
校長先生は、その後教育長となられ、ついには大教育長と呼ばれるまでの教育者になられました。そして幼稚園児にも、搾取の快感をしっかりと刷り込み学習させてくださったのです。懐かしくなって探していったら、「デジタル岡山大百科」というサイトにありました。デジャヴュ(?)とかいうプラグインも導入して開いてみたら、これは驚き。単なる漫画の本じゃあなかったのです。
例えば「月世界探検旅行(第9巻第10号)」ですが、全部で70ページくらいあって、「はしがき」をお書きになっておられるのは、英文学の大家であった京都大学教授・深瀬基寛先生です。本体は、ポーの三大作品を縦糸に、月に関連する知識を横糸にするという、極めてエンサイクロペディアな内容になっています。ざっと項目だけ拾ってみても、その構成の緻密さが解ると思います。
○図版:月のみちかけ
○月世界探検旅行
○赤き死の仮面
○暗黒の地獄
○カバヤ豆じてん
・月の満ち欠け
・大潮、小潮
○図版:潮のみちひ
カバヤ児童文化研究所まで構えて取り組んでいます。クラーク先生も納得する、志の高い一大事業であることが伺えるのです。ボーッとした幼稚園児は、只のキャラメル屋だと思っていたことですが、カバヤさん、大変失礼いたしました(今日は失礼ばかりしてます)。「分子生物学的分野で一流の企業」に成長される原動力は、この時代に既に備わっていたのでしょうね、きっと。
序文の執筆者を見るだけでも壮観です。
「アラビアンナイト(第1巻第6号)」吉川幸次郎
「孫悟空大暴れ(第1巻第10号)」
貝塚茂樹
「アルプスの少女(第2巻第3号)」 今西錦司
「あかずきん(第3巻第1号)」 新村出
「悲劇のリヤ王(第3巻第7号)」 野上弥生子
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アルプス→ヒマラヤ→モンゴル→今西先生、っていう連想ゲームも楽しいですね。でもあの時代です。原稿をお願いするだけでも大変だったことでしょう。
そして「オルレアンの少女(第8巻第1号)」は極めつけ。あの中世史の泰斗・堀米庸三教授でありました。でも、ここで大きな疑問が湧き上がってきました。幼稚園児のレベルじゃないんですよ。しかも、こんな立派な図書、いかに大校長でも没収するわけにはいかないと思われます。再び「岡山大百科」をよーく見ていきます。すると、ありました。「カバヤマンガブック」なるシリーズがありました。ほぼ同時期です。
これでした。校長先生が没収対象にし、幼稚園児が搾取対象にしていたのはこっちの方でした。U先生、失礼しました。とんでもない記憶ミスでありました。先生のは文庫、テバのはマンガだったのでした。こちらは50点は要らなかったでしょうから、罪の意識も多少楽になりました。
2003/09/27(Sat)
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