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☆- カリタンタン -☆

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[ 八月十五夜の月 ]
どうも、先々週、台風にうつつを抜かしていたころが、実は、観月にはベストの時期だったらようです。調べてみると、中秋の名月、こちらでいう「八月の十五夜」は、九月十二日でした。その日は、「直撃すれば、夕方には「眼」が通過するのを見られるかも」なんて、金星号ウォッチングを精を出していたのだから、念頭にさえ浮かぶはずがなかったのです。

八月十五夜の月、といえば、光源氏と夕顔の逢瀬が有名ですね。「八月十五夜、隈なき月影、隙多かる板屋、残りなく漏りて来て、見慣らひたまはぬ住ひのさまも珍しきに……」などと、さりげなく、舞台装置に使っているのです。夕顔のその後の運命を考えれば、ほんとうに、光源氏ってヤツはけしからん。これは、何も、テバがもてないから言っているのではなく、世間様が怒っているのであって …… 失礼。

ところで、沖縄を舞台にした物語もあります。1956年MGM作品、「Teahouse of the August Moon」です。日本では公開されたのかどうか知りません。「八月十五夜の茶屋」とでも訳すんでしょうか。主演は、驚くなかれ、あのマーロン・ブランド、そしてヒロインは京マチ子です。もっとも、俳優の皆様も、出演したことを忘れたがっている、というような映画である可能性もあるようです。

昭和21年、日本人にデモクラシーを教えようと、沖縄のある村に、米軍大尉が勇躍乗り込みます。彼はまず、(アメリカのペンタゴンの形をした!)学校を作ろうとします。ところが、ただの素朴な農民としか思っていなかった村人に、みごと騙され、結局は茶屋をつくってしまうのです。ここを舞台に、マーロン・ブランドと「蓮の花(ロータスブロッサム)」と呼ばれる京マチ子の間に恋が芽生え …… 。

どうです。一度見たくなりませんか。テバは、是非見てみたいと思いますが、どこにあるのでしょうか。どなたか、ビデオでもお持ちの方、貸して下さい。(あの「醜いアメリカ人」という言葉が流行ったころの作品ですね。)
2000/09/28(Thr) 曇り


[ たまには「タン」でも ]
カリタンのうち、嘉利由の話ばかり続いたので、バランス上、たまには「タン」の話でもやります。

昔は、ヒト・モノ・カネとも言ってました。そう、政治家の好きなアレ……、ではなく、「流れ」のことですね。それを、このごろは、ヒト・モノ・情報、というのが主流になってきたようです。この流れの大きさが、なにがしか活力のバロメータになる、という考え方です。小は、店のはやりすたりから、大は国家の盛衰まで、全部、このバロメータで表せるというのだから、すごい。

ある閉じた領域について、一定の期間、これら三要素それぞれの、出と入りをはかります。ヒトについていうと、領域が国なら、旅行者・移民・密入出国者などになります。領域がビルだとしたら、通勤者・来訪者・ドロボーなどですね。同じように、モノ・カネ・情報、などについても測ることができます。

テバのマンション(名前だけ)について、この活力を考えてみるわけです。まず、この領域の特性ですが、出入りのドアは一ヶ所だけです。ベランダから出入りすることも不可能ではありませんが、5Fにありますから、そのためには、相当の度胸と、周辺住民の方々ご理解が必要です。ゆえに、ここからの出入りは、実質ゼロとみなせます。

まず、ヒトの出入りに関する考察をします。これは、ドアから一人はいったら、中の人口は「1」になります。逆に、一人出たら、人口は「ゼロ」ですね。もし、それ以外であったら、これは問題です …… いやいや、そんな話をしていたのではない。出入りの人数の差は、室内の人口の増減に等しいのです。そして、最初に入居したとき誰もいなかったのだから、ゼロと1のいずれかしかないのです。出入り各々の総計は、一日あたり3〜4人といったところです。(いつも同じ人です。念のため。)

次、モノです。最近は落ち着いてきたので、これの出入りはあまりありません。せいぜいスーパーバッグに換算して、二日に1個ぐらいが持ち込まれるというところです。「出」は、すなわちその中身のなれの果て、つまりゴミですね。暴風警報が出ると、那覇市・久茂地地区に属するこの領域も見捨てられ、三日ぐらい回収に来ませんので、その間はゼロです。結局、平均すると、二日に1個ぐらいが出ていく勘定です。その証拠に、家の中にあるものの総量は、これといって、増えも減りもしていません。

おカネはどうでしょう。この領域の内外にわたる(つまり戸口のところでの)出入りは、皆無です。誰もお金を持って来てくれませんし、集金にも来ません。口座振替の発達も一因でしょうね。そういえば、押し売りも来ません。これは何が発達したせいでしょうか。

最後に情報です。ベランダの外から、「おーい」と声をかけてくれても、風速40メートルに耐えたサッシは、あまり音を通しません。それより先に、2〜4Fの住人が顔を出すことでしょう。ドアから入ってきて井戸端会議を始めるヒトもいません。結局、電話とネットだけです。これは通話料、通信料の請求書を見て、青くなるくらいです。しかし、ハードディスクの中身以外、増えているものはありません。1ヶ月で30Mb増えたとして、一日あたり1Mbです。

総括です。この領域(テバのマンション)の活力指数は、一日あたり、

       ヒト  3〜4 人
       モノ  1/2 Sb(スーパーバッグ=新単位!)
       カネ   ゼロ 円
       情報    1 Mb

となります。この数字を刑事さんが見たら、「怪しい」と思うでしょうね。これが政治家の事務所だったら、極端な清貧・井戸塀、次回落選確実です。

どなたか、別の事例での計算結果が出たら、ご教示ください。
2000/09/26(Tue) 晴れ


[ 予想外生命体 ]
着任以来、私の部屋の片隅に、不思議なマット片がありました。直径三十センチくらい。あの安物の、カーペットマットのなれの果てです。元来は正方形ですが、これは、それを内接円状にカットしたものです。

もちろん床には同じマットが、これはきっちりと、縦横に敷き詰めてありますが、その孤独な丸いマットだけは、妙に薄汚れて拗ねた姿をさらしていました。戦い果てたホッケーのパックという風情です。このごろヒマができたテバは、本日、手にとって、しげしげと眺めたわけです。

中心付近にポツポツと穴が空いています。やっぱこれはゴミだわ、というような判定をしました。故に、捨ててもらおう、……女の子を呼んで、よくわかんないけど捨ててくれ、というような依頼をしたのです。が、例によって、その辺から、この物語は始まるのです。

実は、二ヶ月ほど前、この円形マットの上には、ガジュマルの植木鉢があったというのです。普通、室内の、この手の鉢物系は、時間とともにやつれ、ついには枯れ果ててしまうものです。ところが、そのガジュマルはやけに元気だったという(テバは見ていない)のです。何気なく位置を変えようとした時に、事件は起こったといいます。

こいつは、ガンとして動かなかったのです。そう、このガジュマルは、植木鉢を貫通し、その下の丸いマットを軽々と突き抜け、ついには、プラスティックのフローリングの奥までに、その根を通していたというのです。そんな、バカな……と言ってはいけません。目撃者は多勢いるのです。

それより恐ろしい思いをしたのは、真下のフロアーにいた人(某会計課長)ですね。本人は、全く気づかず、普通に生活していたそうです。本日、初めてその話を聞いたらしいのです。少し震えてました。
2000/09/21(Thr) 晴れ


[ 台風一家 ]
首里で生まれ育った玉○さんの子供時代の、台風時の過ごし方だそうです。

お母さんは、早速、ヒラヤーチーという韓国のチヂミみたいなものと、かまぼこ(また出た!)を作り始めます。子供たちは、家中の雨漏りしそうな箇所に、バケツやナベを置いて回ります。お父さんは家の点検、ゆるんだりしている所を直します。最後に雨戸を閉めて、筋交いの板を打ち付けたりもします。

さあ、大分風も強くなってきました。そこで、家族揃ってちゃぶ台を囲み、ヒラヤーチーや蒲鉾をいただきます。食後、一家は、全員玄関から表に出ます。玄関以外は釘付けですからね。そこで、お父さんは玄関も釘付けにします。ヒト一人いない、釘付けハウスのできあがりです。

全員揃って、近所の国際通りの國映(こくえい)に行くのです。時にはその近所の沖映(おきえい)の場合もあります。家族で相談して、面白そうな方に行きます。もちろん、台風の接近が予想されると、相当早い段階で、どちらにするのか相談しておくのです。台風の時だけは、オールナイト上映をやってくれるのです。

……

夜が明けました。台風一過です。映画も楽しかった。一家は家路につきます。ところどころに、強風で大破した家を見かけます。我が家も見えてきました。よかった、今回も我が家は無事だった。

【文化人類学者TEBA氏コメント】
当時の那覇市内で、台風時の強風に必ず耐える、鉄筋コンクリート建造物としての、映画館の位置づけの高さが伺われる。それにしても、収容能力から考察して、全市民が映画を見た、ということは考えにくいので、相当高額な特別料金を徴収していたのではないか。玉○家が、どのような階級に属していたのかも含め、後世の研究に待つところが多い課題ではある。
2000/09/12(Tue) 台風


[ 台風・金星号 ]
現在来ている台風14号の名前は「サオマイ」、だそうだ。ベトナムの命名で、金星という意味らしい。今年の台風の名前を見ていこう。第1号はダムレイ(カンボジア命名で象)、第2号はロンワン(中国命名で龍の王)である。このあたりはフムフム、といったところであるが、第3号のキロギー(北朝鮮命名で鴨)で、急に、どうして?、となる。北朝鮮が提案しているシリーズを横に見ていくと、鴨、花、カモメ、セミ、やまびこ、となっている。う〜ん、台風って、北朝鮮あたりではその程度なのか、と考え込まされる。輪をかけるように、第11号は韓国命名で「蟻」になってる。

じゃあ、台風の怖さをよく知る日本としてはどうか、と、早速並べてみると、てんびん、うさぎ、かんむり、こっぷ、とかげ、ときた。何じゃこりゃ。実は、全部、星座の名前なんですね。現に今年の第5号は「てんびん」でした。てんびん棒がブンブン回転しながら飛んでくる、なら分からないこともないけど。しかし、たとえば「うさぎ」だったらどうでしょ。「大型で強力な台風・うさぎ号は、只今南大東島の南東150kmの海上を……」となる。力が抜ける。小さな子供などは、「ウサギちゃんが来た」と大喜びをしかねない。

まあ、星座名にすることについては百歩譲るとして、だけど、むりぶし(昴)を忘れてほしくない。何と言っても、台風はこちらが本場だ。
2000/09/11(Mon) 雨


[ 琉歌のパズル ]
吉屋チルのことをもう少し知りたいと思い、書店に行く。立ち読みをしていて、びっくりした。

 恨む比謝橋や 我身渡さと思て
  情け無ぬ人の 架きて置きやら

アレッ、何か違う、と思ってよくよく見ると、第二節と第三節が入れ替わっているのだ。が、同時に、どちらが正解か、というのは非常に難しい問題だと気づいた。

というのは、和歌が五・七・五・七・七の三十一音であるのに対し、琉歌は八・八・八・六の三十音である。すると、第二節と第三節が入れ替わったとしても、韻文の場合、それなりに意味が通って、すんなりと収まってしまうこともあるだろう。

と思ってさらにパラパラ見ていくと、同じ吉屋チルの歌に、

 及ばらぬとめば 思い増す鏡
  影やちやうもうつち 拝みぼしやぬ

というのがあった。これなんかも、われわれやまとんちゅーには、ひっくり返されてもわからない。今度、うちなんちゅーを相手に、「どこがおかしい?大クイズ」でもやってやれ、ということで、結局その本を買ってしまった。
2000/09/10(Sun) 曇り


[ そばについて[2] ]
ソーキそばより以前からあったものが、「三枚そば」というもの。(ま、既にネタ・バレバレですか。)

やまとんちゅー、少々遠慮がちに、

 や「おばさん、このそば、肉が二枚しかないよ」
 お「うちは、いつでも二枚よ!」

でも、でいご会の会長に聞くと、間違いなく、二枚のっけが正統だという。それにネギ(わけぎに近いようなもの)、と沖縄かまぼこ。トッピングは、これで全部。これこそが、ゴシック・ボールド・100ポイント級の、沖縄そばらしい。でも、沖縄かまぼこって?

先日、息子が来たとき連れて行った店は、三枚肉を三枚乗せてくれていたので、親子共々、無用な恥をかかずに済みました。国際通りの店だったので、店の方もあきらめて、観光客には三枚入れてるのかもしれない。(三越近傍の「街角」というお店です。お奨め!)
2000/09/08(Fri) 晴れ


[ 島の叙情 ]
 恨む比謝橋や 情け無ぬ人の
  我身渡さと思て 架きて置きやら

[うらむひじゃばしや なさけねぬひとの
  わみわたさともて かきておきやら]

(いつも渡っていた比謝橋なのに、なぜ、こんなにも恨めしく思うのだろうか。
 そうだ、この橋は、情け知らずの人が、私のことを渡してやろうと思って、
 架けておいたものだからに違いない)

強烈な情念が伝わって来ます。が、実は、この歌は、たった8歳の少女が詠んだものです。となると、むしろ、あまりにも早熟な感性、といったものを感じます。

吉屋チル(鶴)は、十七世紀半ばに、わずか19歳で没した薄幸の女流詩人です。この歌は、少女チルが、生まれ育った村を出て、那覇に売られて行く折りに詠んだもの、とされています。
2000/09/06(Wed) 晴れ


[ クースーの日 ]
今日9月4日は、人類初、第一回クースー(古酒)の日なのだそうです。高らかな宣言とともに、記念オークションなんかをやってました。泡盛の古酒は、戦前には百年ものさえあったそうですが、あの時に、艦砲射撃や火炎放射の嵐の中に、消えてしまったのです。

今回こちらで感じるのは、近頃、少々クースーにこだわりすぎだな、ということです。というのは、古酒を名乗る銘柄が、昔にくらべ、ベラボウに増えているのです。本土の評論家やメディアが、ヨイショするものだから、ますますブームなのか、とも思います。サミットがこれに輪をかけた、という人もいました。もっとも、G8の首脳ご用達、といことにはならなかったのですが。

乱造のせいか、三年ものとか、五年ものの古酒まであります。こんなに若い酒をクースーと称しているなら、このブーム、それほど長続きするような気はしません。伝統の古酒文化のためには、大変残念なことです。

たとえば、700mlぐらいの泡盛なら、並で600円、上で800円といったところです。ところが、同じブランドでも、クースーを名乗れば、1500円ぐらいで売れるのです。おわかりですね。出来の違う瓶が三つあったとして、これを混ぜると、上が三本とれて合計2400円です。ラベルを変えて別々に売っただけで、三本計で2900円になるのです。

泡盛をチビリとやりながら思う
  ……古来、魂の値段、五百円也
2000/09/04(Mon) 晴れ


[ むりぶし ]
冬の夜空に輝くあの七つ星のことで、漢字で書けば「群星」となる。昴(すばる)、あるいはプレアデスとも。この単語、おもしろいと思ったのは、沖縄ことばの母音が、万遍なく現れていることである。

む → む つまり u → u

れ → り     e → i

ぼ → ぶ     o → u

し → し     i → i

ここで、a→aでないと、日本語ではなくなってしまうから、結局

(あ、い、う、え、お) → (あ、い、う、い、う)

となる。よく例に引かれるのは「こめ」が「くみ」になる、というやつだが、変化しない母音もきちんと含んでいる点、「むりぶし」のほうがベターである。

ところで、この法則によれば、こちらの人は、「インターネット」を「インターニットゥ」と呼ぶことになるが、どうか。残念でした!やまとんちゅーが「ビーチパーテー」をやっているのをシリメに、進駐軍仕込みで生きのいい「ビーリパーリィ」をやるような方々です。英語の発音は、あんまり較べない方が、身のためです。
2000/09/01(Fri) 晴れ

My Diary Version 1.21
[ 管理者:テバ 著作:じゃわ 画像:牛飼い ]