<テバコラ 第33話>


☆城北の酒場にて(将軍たちの夜)☆
                      
(2000/05/19)



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寒い日が続く。でも今は、斎○酒場の中だから暖かい。今日も特等席に座れた。

のれんを潜って左の奥の隅。いつの頃からか、ここがお気に入りの席になっている。

なんといっても落ち着ける。テレビの真下だから、この一角には、皆さんあんまり

座りたがらない。したがって、空いていることが多い。ふ、ふ、ふ、誰も知らない

ひそやかな楽しみ。


冷しビールも飲んでみたいけど、今日は大散財だったから、まあ、お酒にするか。

ビールと言えば、あの職人さんたちともこの頃会わないな。つまみは串カツ100円也

にしよう。大変安いけど、実は、たった一本だから、それほどお得というわけではない。


今日は奮発して渋谷のパンテオンでロードショーを観てきた。映画は、いつもは、

池袋地球座・150円入れ替えなしで、黒沢明シリーズとかが専門だけど、たまには

贅沢もしなくちゃ。人間としての品格に問題が生じると困るからね。

おっ、お酒(二級)と串カツがきた。一本しかないけど、揚げたてで、コロモの表面が

ジュウジュウいっている。そこにソースをたっぷりかけて、至福、至福。


でも、「将軍たちの夜」って結構面白かった。ミステリーで、戦争で、おまけに

ナチスの将軍も将校もと、蓋を取ったら好きなものばかり入っていたお弁当、

といった嬉しさだった。もう1クール観たかったけど、入れ替えがあったから駄目。

何といってもロードショーだからね。高級な生活にも厳しい一面があるということだ。


東京に出て来て、ロードショー・クラスの映画はこれで三本目。最初の二本は

「バルジ大作戦」と「パリは燃えているか」だ。みんな戦争で、ナチスで、というやつ

ばかりか。ちょっと人格に偏りがあるのかな。ま、いいや。何といっても映画は

面白くなくっちゃ。


【お酒をもう一本と、肉じゃが100円也を追加し、これを片付けて店を出る。途中、

近所のスナック喫茶の前を通りかかる。もう遅いので、この店は看板を消している。】


スナック喫茶っていうのはどんな店なんだろう?一度、先輩と一緒に覗きに来よう。

K先輩はいつも貧乏しているようだから、これは無視。パチンコでコツコツ儲けている

とかいう噂がある、S先輩にたかることにしよう。ところで、おや、当該の店の扉が

開いている。しかも誰かが手招きしているよ。若い女性だ。そんなこといったってあなた

あたりに余人はないワケだし。ひょっとしてアタシですか、アタシ……


(女)あの、すみません。

(テ)あの、ハ、ボクですか?

(女)はい、実はお願いがあるんですが。よろしいでしょうか。

(テ)はい、……ハ、何でしょうか。

(女)ここではナンですから、お店の中に入って頂きたいのですが。

(テ)ハ、ハイ、ハイ……


しかし弱ったな。看板は消してあるし、店内もほとんど消灯で薄暗い。若い女性が

何事か困っていて、通りすがりの貧乏学生風に必死にすがるの図。ま、それほど

必死でもないかな。え〜っと、こんな時は、何か参考になるような話があったよね。

「因幡の白兎」か、いやいや、そんなんじゃ参考にならんぞ。「鶴の恩返し」? 

ますます関係ないゾ。


(女)あの。

(テ)ハイ。

(女)このマッチで、

(テ)ハイ、このマッチで、

(女)床の上に並んでいるバルサン全部に火を点けてください。

(テ)ハ? ……ハイ。

(女)わたくしはカウンターの裏側のバルサンに火を点けますので。

(テ)ア、……なるほど。

(女)火を点けたら、煙に巻かれないように、素早く店を出てください。

   よろしいですね、それでは、1、2、サンッ


【おやすいご用で本当によかった。若い女性の感謝の言葉とまなざしを背に、ナチスの

将軍は、右肩をやゝ上げて、バルサンの夜の闇の中へと消えていくのであった。】


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ところで、とうとう、スナック喫茶とは何であるのか、ということは判りませんでした。

歌声喫茶や、その後のカラオケ・スナックの仲間なんでしょうか。