<テバコラ 第13話>


☆温泉のすべて☆(1999/12/13)



レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)は、人体における血液の流れからの類推などをもとに、

地球上の水の移動・運動を研究しました。彼は言います、

「水(お湯)について論考するなら、第一に経験を論じ、その上で理由(理論)を考えるべきだ」

と。つまり、「こんなこと、あんまりややこしく考えたらあきまへんで」と言っているのです。




地球上での水の輪廻について、彼は二通りのルートを考えていました。

第一のルートは、陸上あるいは海洋から水が蒸発し、雲になり、雨や雹として降り、

ついには川の流れになるものです。ただしこれは大雨で川が増水するようなケースを

想定しています。




雨がしばらく降らなくても川の水は涸れません。なぜでしょう。

そこで彼は、第二のメカニズムを考えます。

この動力は、なんと海洋の潮の満ち干(地球規模のポンプ!)です。

これにより、海洋から地中へと、無数の水脈(パイプ)を通って水が送り込まれます。

その結果、地球のあらゆる場所、たとえばアルプスの一番高い山の上にさえ

水が送られていきます。

高山の頂上付近ではこの水脈が途切れ、そこでは水が泉として湧き出しています。つまり、


  潮の満ち干 = ポンプ = 人間の心臓

  地中の水流 = パイプ = 人間の血管


という、美しい対応関係があるのです。

ですから、海からはるか上空にある高山で、泉がこんこんと湧き出すのは、人間の体の

上方の部分、

たとえばおでこに傷を付けた場合に、血がピューッと吹き出てくるのと一緒だと言っています。



もう一つ、重要な理論的基礎として、例の「地水火風」の四大元素があります。

火(太陽)は水(海水)を暖める。この暖かい水は地(大地)の中を上昇していく。

山頂付近で湧き出す時には当然冷え切っています。だから泉の水は冷たいのです。

ところが、それほど高くないところに、水脈が切れてしまっているような場所があるとしたら、

暖かいままの水が噴き出してくることになります。すなわち、これが温泉です。

これも鍋を火にかけてやると、暖まるにつれて、鰹節がぐるぐる対流するのが見えますから、

良くわかりますよね。



人体原理と四大元素だけで、温泉が湧く原理が説明できたのです。



ところで、人間様の温泉に猿が入ってくるような名所が、ところどころにありますが、

この発想は少しおかしいのです。人間出現より先に、猿も居たし、温泉もあったのですから、

猿の温泉に人間が入ってきているというのが正解です。


では、猿はなぜ温泉に入るようになったのでしょう。



猿の遠い祖先は魚です。いずれにせよ、あらゆる生物の故郷は海です。

猿は陸上を二足あるいは四足で徘徊する、極めてストレスの高い生活を強いられています。

そして少々疲れてきます。魚の時代の懐かしい記憶が、彼らを温泉に誘うのです。

ひとときとはいえ、お魚に戻ることによって、心を癒やしているのです。



人間が温泉に入るようになった訳も、もう、はっきりしてきましたね。

人間も猿を真似ることによって、猿の時代、さらには魚の時代にかえり、

ストレスから解放されるのです。その証拠に、子供たちは正直ですから、

一挙に先祖返りして、温泉で魚のように泳いだりして大人たちから叱られています。

大人もお魚に戻りたいのですが、もう少し進化してしまっているため、そうもいかないのです。

かわりに、猿の真似をして、世間話に興じています。



人体原理と四大元素と先祖返りだけで、温泉に関するすべてが説明できました。

やはり、レオナルド・ダ・ヴィンチは偉大ですね。





    (原註)過日、近郊の温泉に行き、楽しい一日を過ごしてまいりました。

         皆さんも大いに「先祖返り」を楽しみましょう。