朱鷺の玉手箱 1


   ソナチネ   by ハル



白い壁にかかる乾いた薔薇の花と麦藁帽子が

この夏の罪の全てなのだろうかと

窓の桟に薄く積もったφ中間子を

指でなぞって



金木犀の花は私の知らぬ間に咲き

夜を秘めた香りを かすかな風が運ぶ窓辺で

物憂く降り注ぐニュートリノを見つめながら

事象の境界線を思いはさまよう


チェレンコフ放射に浮かび上がるのは

あなたのあどけない言葉

そして頑是無い笑顔


私に何が言えただろう・・・・

あなたは正当だったのだ

まるで ロクウェルの子鬼のように



         (パラサイト・アトムに寄せて)