錬金術(1) ともかく、つくってみよう [3分間クッキング]

(2002/12/29)


金は、その、不変、美麗、稀少といった特性から、常に世の大多数のあこがれの的

でありました。もうひとつ、金は他の物質からは合成できないとも信じられてきました。

しかし、この常識に疑問を抱き、挑戦し続けた一群の人々がいます。これが錬金術師

です。彼らの努力は、例外なく空しいものに終わり、錬金術師というと呼び名そのものが

夢想家の代名詞に使われた時代さえあったようです。窓すらない部屋で、不思議な

記号と挿絵が満載された本を読み、怪しげな物質の入った容器を加熱したり冷却したり

している、家族からも見放された孤独な白髭の老人、といったイメージでした。


錬金術師(とその妻)


ところが20世紀は、彼らが愚者どころか、偉大な先見者であったことを証明しました。

なにはともあれ金を作ってみましょう。老人の果たせなかった夢を実現するのです。

材料と道具は、その辺にあるものばかりです。そして方法も極めて簡単。

誰にでもできます。それではまず、材料からいきましょう。



 アップ・クォーク

   276グラム

 ダウン・クォーク

   315グラム

 グルーオン(糊)

   適量

 レプトン(電子)

   適量


次に道具です。がっかりするかも知れませんが、これもごくごくありふれたものばかりです。

あなたの台所にすでにあるものばかりです。



 高性能圧力鍋
 

   1式

 高火力レンジ

   1式


以上です。手順? それこそ超簡単です。まず、四種の材料をガサッと圧力鍋に入れます。

下ごしらえすら必要ありません。それを一気にレンジで加熱し、高温高圧にします・・・

そこで火を止めます。3分間クッキングのお約束ですから、約3分かけて圧力を抜きます。

ひとりでに冷めてきます。そこでおもむろに鍋の蓋を取ってみましょう。そこには約590グラム

の金が、燦然と輝いています。現在、金相場はグラム(もち1g)1400円ぐらいですから、

80万円ちょいの金が手に入ったのです。材料を1000倍すれば、約590kg

(約8億円)の金ができます。一番お金がかかるのは、多分、高性能圧力鍋や

高火力レンジですが、これらに相当な投資をしても、簡単に元を取れるはずです。


さて、材料の入手法です。まず、グルーオンからいきましょう。「グルー」すなわち糊ですから、

当然、文房具屋さんでも売ってます。まだやってないので、計算過程は示しませんが、

スティック糊なら数本でよいはずです。次、電子。これも単三乾電池数本で済むはずです。

糊と電池なら、コンビニで一緒に買えますよね。そこで一番問題になるのは、クォークです。

しかしご心配めさるな。ものの本によれば、クォークこそはこの世界の物質すべての

「素(もと)」なのです。すなわち、その辺の砂利や砂の中にあるのです。砂利・砂なら、

1kgや1トンぐらいは、只同然に安く簡単に入手できます。お金がないヒトは拾ってきましょう。

さあ、試してみましょう。


どうです。現代の知識はここまで到達しているのです。

(なお、グルーオンも電子も、砂利・砂の中に含まれていますが、ここで適量を追加するのは、

加熱の過程で失われる分を補うという意味です。慎重な配慮、これこそ錬金術の真髄です)


金をつくる者(Gold Finger)