●『方庵日記』(写本)を見るに、天保三年四年度は、毎日の温度を注記せり。鼈頭に標記していふ。「験温器以三十二度為氷九十八度為血温以二百十二度沸騰、右〈ハアレンヘイトの法〉以氷為初度以八十度為沸騰、右〈レアウメル之法〉」と。また三年正月元旦の条下に、「寒度四十度、朝五つ時を以て為則」とその測定時刻を明らかにせり。

●『方庵日記』嘉永四年九月四日の条に、出来上がりたるを差し上ぐるとき、添付して上げたる「作験温器法」あり、下のごとし。

先ツ管ヲ将ニ氷ラントスル水中ニ挿ミ記シテ三十二度トシ、又管ヲ煮沸湯中ニ挿ミ記シテ二百十二度トシ、両間ヲ九分トナシ、又折半シテ十八分トナシ、一分毎ニ十度トシ、氷水ノ度ヨリ沸湯の度マテ合シテ百八十度トナル、又氷水ノ度ヨリ以下前ニ準シテ三十二度ヲ刻シ、是ヲ初度トス、惣計二百十二度
  三十二度 氷
  五十五度 寒暖折中
  七十六度 夏暖
  九十八度 血温
  百十二度 強熱
 二百十二度 沸湯

 其日ぐらしと 寒暖計は
   暑さ寒さで 伸び縮み  【開新どゝ逸】