●本図から始まる四枚の図と、その解説をよく読めば、あなたも温度計を作れます。

●山崎豊太郎は、精密寒暖計製作の祖なり。ここには、柏木寒暖計製造会社の由来を明らかにすべし。
本邦の寒暖計製造業が、今日、山口県三田尻に偏在するは一奇事といふべきなり。
同地柏木幸助、明治十三年の頃、居室に掛け置ける寒暖計に注意し、もしこれを製出するにおいては、洪益あるべきを思ひ起こし、翌十四年始めて小竃を築き、信楽焼茶壺を坩堝に代用し、木炭を燃料として硝子を溶かし、その製造を試み、刻苦精思、十六年十一月に至り、やうやくその成功を見たり(製出年代は山崎方早し)。

●山崎豊太郎の硝子細工は、ただ験温器のみに限るにあらず、製糸用具、理化学器械類、各種にわたる。その独自発奮向上を怠らざる経歴談は、当時の硝子細工界の史料となすに足るをもって、長文ながらこれを収ぶ。以下その談話なり。(以下全部略)