朱鷺の玉手箱 8

     宴        by ハル 2000/04/15(Sat)





北部ドイツの古い町で飲んだ、もう名前も忘れてしまったビールの味が
忘れられない私であります。
ニシンの酢漬けを指でつまんで口に放り込みながら、陶器のジョッキに
注がれるビールを、際限なく飲み続けたことが思い出されます。
(あの下品にして美味なる安肴には、ワインは絶望的に合わなかったっけ)



中世の香りが残る、石造りの街並み
どこか不釣合いなことを意識してる東洋人
そんなこと気にもかけない陽気な酔っ払い
足元にうずくまりながらおこぼれを待つ猫
片言のドイツ語と英語の混じった言葉にも
微笑みながら答えてくれる気のいい娘たち

時が止まったような しかし確かに生きている実感を感じさせる街
何故か私の耳に聞こえてくるのは
セロニアス・モンクだったりして・・・・・・

どこか加賀の町を思わせる
冷たくて やさしい街並み
「能登はやさしや土までも」
「能登はやさしや人殺し」
この歌がわかるようになっって
大人になったような気がした。。。。

ほんの数日立ち寄っただけのよそ者にわかるはずも無い
異国の街と人々の営み
しかし そこに感じた 故郷の町と同じ匂い

杯を満たそう
ここまで自分が歩いてきたその時間に感謝して
杯を干そう
新しく始まる時の流れに思いを馳せて