★スーパー常務

             
(2001/02/04)



泡盛のメーカーに、久米○というのがある。久米島と本島にひとつずつ

あるのだが、名誉(どちらの?)のために一言添えておくと、全くの

別会社である。以下の話は、本島の方の会社で、現在常務取締役に

在籍しておられるTさんに伺ったものである。Tさんは、その全人生を、

泡盛、なかんづく久米○に賭けている人である。たまに貰うボーナスは、

すべて会社に再投資してきたというし、まれに競馬で大穴を当てた時も、

その半額は会社に投資したという。(残りの半分は奥さんが没収)


Tさんが駆け出しのころ手がけた企画に、四コマ漫画をラベルにした泡盛

というのがある。主題はプロ野球であるが、久米○漫画ボトルというだけで、

ネーミングは特にないので、酒屋の店頭では、「漫画ください」、「はいどうぞ」

といったやり取りがあったに違いない。ただ、次々と新しい四コマ漫画に変えて

いかなければならず、相当大変だったらしく、あまり長続きはしなかったという。


そのうちに、17年ほど前になるが、ある対抗メーカーが「首里」というブランドを

発表した。これは、今でも語り継がれている逸品(?)で、にっこり微笑む金髪の

ビキニのネーちゃんがラベル写真に採用されており、当時の保守的な泡盛業界に

強烈な衝撃を与えたらしい。コピーも「君と僕との愛言葉、ハイテク精酒、首里」と、

「ケンとメリーのスカイ……」に匹敵する、なかなか洗練されたものである。


この「首里」への対抗がTさんに命じられた。Tさんが、寝食を忘れて開発したのが、

「ユーワク・シロー」と「ヨリドリ・ミドリ」のペア・ブランドである。なにやら怪しげな

ロゴを伴ったラベルである。この泡盛、結論からいうと、全く売れなかったらしい。

たちまち製造中止に追い込まれたという。しかし人生万事塞翁が馬。このブランドは、

製造量が余りにも少なかったため、滅多に手に入らず、コレクター諸氏にとっては

垂涎の的になっているらしい。相当のプレミアムが付いて取り引きされているという。


Tさんは、ある種の天才であろう。二十四時間、三百六十五日、泡盛と久米○のこと

しか考えていない。最近出したブランドも、中味は素晴らしいのに、ネーミングの

センスが凄く悪い、ということで、再び話題になった。それは「奴樽蔵(やったるぞう)」。

このラベル、これは実はTさんの心意気に他ならない、ということは既にお解りだろう。

こういうヒトって好きですね、テバは。