★ミルク神★ -福禄寿(W)-

             
(2001/01/01)



お釈迦さまというものは、史上第六番目の仏さまだと言います。

で、次に控えているのは誰あろう、第七番目の仏さまの弥勒さま、

とされています。ところで、どこに控えているかというと、あの兜率天

なのです。それでは兜率天はどこにあるかというと、それこそ

究極の場所、須弥山の更に上空にあります。なんで、無知蒙昧の

テバがそんなことを知っているのか、というと、これは、あの

SFマガジンで勉強したからなんですね。「百億の昼と千億の夜」、

作家は光瀬龍、知る人ぞ知り、知らない人は知らない、

小松左京以上とも言われる大先生です。わたくし事で恐縮ですが、

光瀬先生の火星シリーズなんかには、そのクール・アンド・ドライな

世界に痺れっぱなしでありました、本当に。


閑話休題。お釈迦さまの入滅から幾星霜、末法の世さえ過ぎてしまった

人類は、もはや弥勒菩薩に救っていただくしかない、というのが

現状のようです。救っていただく方法には、二通りあるといいます。

第一番目の方法は、しっかり修行を積んで、兜率天に生まれ変わる

というやり方です。当然、その地では弥勒菩薩にお会いでき、お救いも

頂けるというわけなのです。この積極訪問型を、上生(じょうしょう)と

呼ぶそうです。しかし、ご存知のように、これは生半可なことでできる

ことではありません。須弥山のそのまた上の世界に生まれ変わらなきゃ

ならないのですからね。東京タワーのてっぺんに登る程度の覚悟や

修練では、とてもできるコトではありません。


衆生にとっての救いは、第二の方法があることです。弥勒菩薩本人が、

この世に天下ってくださるのです。これを下生(げしょう)というようですが、

その時、地上には極楽が現出するのです。テバなんかはこれを待つしか

方法がないというか、楽しみにさせていただきたいと思うのですが、

大変な問題があります。それがいつのことなのかということです。

一般には、56億7千万年後のことである、とされています。えーと、

宇宙の年齢が135億年、地球の年齢が45億年、……、やっぱり

光瀬龍はスケールがデカイや、なんて感心している場合じゃありません。

とてもそんなに待っていられるものではありません。何か第三の方法で、

ひとつお願いできませんか、ということになります。


ところが、通常、これはない、ということになっています。普通はですよ。

でも、こっそり教えてあげます。実は、第三の方法はあったのです。

なんと、年に一回、弥勒菩薩御自身がご訪問下さる地域があったのです。

何を隠そう、これこそ、嘉利吉の島々、沖縄であります。この島では

弥勒様は、例の母音変換の法則に神仏習合の法則を加えて、

ミルク神」と呼ばれます。お釈迦様は、当然「サーカ神」になります。

お見えになったミルク神は、一年分の世果報(ユガフー=現世のご利益)を

人々に約束され、再び兜率天にお帰りになります。どーです、便利でしょう。

この現象は、どうも八重山(ヤイマ)を中心にしているようですが、本島を含め、

沖縄の島々では結構普遍的に見られるようです。


本島の北部に金武(きん)という町があります。テバはここでの

あるおめでたい席で、「ミルク節」という雑踊り(ぞうおどり)を目撃しました。

舞台では、あの七福神の一人である布袋さんが、芭蕉の扇子を

ひらめかせながら、悠々と舞っていました。他の雑踊りにくらべ、極めて

異質なものを感じました。そして、これはまさに福禄寿の世界ではないのか、

という印象を強烈に持ったのです。実は、これはミルク神というものであって、

ミルクとは弥勒のことであるということを、同席の方から教えていただきました。

それからというもの、「ミルク」が頭から離れなくなってしまったのです。そして、

海南の世界では、ミルク神がどんな重要なものであるかが、その後、

徐々にわかってきたのです。


【百億の昼と千億の夜】 萩尾望都女史のコミックにもなっています。

【56億7千万年後】 兜率天の1日は地上の400年にあたるという説が

              あります。例の相対性理論のウラシマ効果に似ていますね。

【布袋さん】 テバが目撃したミルク神は、頭の形といい、お腹を出しているさまと

         いい、本当に布袋様のお姿でした。残念ながらカメラを車に

        置き忘れておりました。